人類進化を目指して新たな文化の創造

日本で産まれた渡来中国人女性の子供に日本初の2重国籍を

平成10年2月19日、島根県八束郡鹿島町の恵曇漁港に中国からの「集団密航」がありました。

 その中に、李雪梅さんという25歳の妊婦が含まれていました。出入国管理法違反(不法入国) の罪に問われた李さんは、日本に来たのは中国の人口抑制策の下では2人目の子供を出産で きず、「第2子出産のための緊急避難だ」と主張。

  7月22日、松江地方裁判所で1審判決があり、長門栄吉裁判官は検察側の懲役1年の求刑に 対し、密入国行為は有罪としながらも「心情は同情に値し、酌量すべき余地は大きい」と「刑免除」 の判決を言い渡しました。李さんは、判決直後、出産を理由に広島入国管理局から1ヵ月間の仮放 免の許可を得、島根県内の身元保証人に引き取られました。

  これに対し、松江地方検察庁は判決を不服として、8月1日、理由を明らかにしないまま控訴。

  その後、8月31日、李さんは松江市立病院で女児を出産。女児は日本国籍は取れませんでした。

 弁護人の水野彰子弁護士は、国に李さんの難民認定(国籍のある国で社会的・政治的に迫害さ れる恐れがある外国人が生活保護などの面で日本人と同じ待遇が受けられる保護制度)を申請し ていました。しかし、9月29日、広島入国管理局(法務省)は申請を不認定としました。これにより、 10月末で在留期限が切れ、女児ともに強制退去させられる可能性が出てきました。このため、李 さんは10月1日、不認定に異議申し立てをしました。

  強制送還の対象となった後も仮放免は認められていたため、李さんは島根県を出て、東京都内 のボランティアグループの寮に身を寄せていました。その後、病気になり入院、女児を児童相談所 に預けました。ところが、平成11年1月8日、病院で診察を受けた後、ボランティアの付添人に「外 の空気を吸ってくる」と言い残したまま、「日本語も話せない、所持金もない」という状態で失踪。女 児は児童相談所に預けられたままとなりました。毎月行う更新手続きの期日である1月20日になっ ても行方知れずで、28日には仮放免の期限も切れました。

 2月15日、広島高裁松江支部(角田進裁判長)で、被告人不在のまま控訴審の初公判が行われ ました。その中で、弁護側は「この先の身の振り方に不安を抱き、将来を悲観した」と失踪の理由を 説明、就労目的の逃走ではないことを強調しました。

 裁判は即日結審し、判決は4月26日の予定でしたが、4月19日、「判決を直接言い渡すべき被告人が不在」ということで、無期延期となりました。

 戦前、中国に日本軍が侵攻、そして敗戦の混乱時に、大陸には多くの日本人「残留孤児」 が残されました。当時の厳しい政情と衣食住が極度に欠乏する中、中国の人々は自分の子供 と偽って日本人の孤児を育ててくださいました。また、官憲の皆様も日本人の子供と知りな がら、それを公にされませんでした。「戦争中、中国で残虐な行為を働いた日本人の子供と わかれば、どんな迫害に遭うかわからない。また成長した後、正業に就くことも難しくなる」 との思いから、中国人の子供として育てていただいたはずです。

  このような歴史的経緯と、近年、地域レベルでも官民あげて姉妹都市縁組み等たくさんの方々の努力と費用をかけて国際親善が推進されている現状を考えれば、衣食住の満ち足りた現在の島根県で誕生した女児のいる李雪梅さんに対して示した島根県司法当局(松江地検・裁判所・弁護士界)の対応は、国際親善に対するこれまでの努力を無にするものです。それに留まらず、「人間としての基本的要件を備えていない」と言われても仕方がありません。

  有罪か無罪か、刑の執行か免除かを論ずる以前に、日本の地で生を享けた女児の将来につ いて思いをめぐらせたことがあったでしょうか。母親が法廷の場に立たされたということ自 体が、その子にとって、中国に帰ろうと日本で生きようと、あるいは世界のどこで生活しよ うと「国を捨てた密航者の子供」というレッテルが生涯つきまとうことを意味します。また、その女児が将来出産する子供もまともな人生を歩むことが不可能になります。

 憲法の根本的 精神である「基本的人権の尊重」の意味を体得していれば、李雪梅さんを裁判にかけられな いはずで、仮に起訴されたとしても、それを受理してはならず、弁護側も最初に「子供の将 来を考えれば、この問題は法廷で扱うべきではない」と主張すべきではなかったでしょうか。

  特権意識だけ肥大化し、自分の発言や行為が相手や周囲そして国際関係にどのような影響 を及ぼすか考えることもできない、人間性の欠落した人々の集団「島根県司法界」……戦後 の経済発展の過程でエコノミックアニマルといわれ世界で孤立化が進む中にあって、今回の 対応により、国家の要である司法界の実態が全国・世界に発信されてしまいました。

  このように司法界の言動が一般社会と乖離する要因はいろいろありますが、なかでも社会 との接点である弁護士界に大きな問題があるように思われます。独占禁止法に違反した弁護 料の協定料金制度、弁護士会に所属しなければ弁護活動が不可能な閉鎖性、徒弟制度として の「いそうろう弁護士制度」、一度資格を取れば一生審査がない「終身弁護士免許」。きわめ つけは、島根県の弁護士会は、「非合法な利益供与」として、裁判所内に弁護士事務所「待 合室」という私的利益の提供を受けているという事実です。

 これらにより、司法界内部の癒着が進み、裁判制度が司法界に属する人たちの権益と金儲 けの道具になっているのが実態です。このため、裁判官、弁護士同士の馴れ合い体質を生み、 かつ顧問弁護士制度を通じて政・官・財が癒着、社会を蝕む根源的理由となっています。

  このような司法界の現状を放置すれば、島根県民・日本人全てが世界の人々に非人間的集 団とみなされてしまいます。国民がこういうことを見過ごすことが戦争勃発の遠因となって きたことは歴史が示す通りです。世界唯一の平和憲法を持つ日本は、この点を最も重要視す べきではないでしょうか。

  ここに、「国籍法を改正し、李雪梅さんの女児に日本で初めての2重国籍実現」を提言し ます。成人に達するまで2重国籍を認め、制約のない生活環境を保証すべきです。

  成人に達した後、子供本人に国籍選択権を行使させるのが、基本的人権を標榜する国家の 本来のあり方ではないでしょうか。これを機会に、日本でも国籍について非論理的な「血統 主義」から「出生地主義」へ転換・2重国籍実現を提唱いたします。

  アメリカでは国内で生まれた子供はアメリカ国籍を取得できる「出生地主義」を取ってい ます。これに対して「血統主義」の日本では、父親だと思われる人が外国籍の場合、日本国 内で産まれた子供でも日本国籍を取得できません。最近、ドイツでは血統主義から出生地主 義へ転換し2重国籍を認めようという議論が高まり、すでにフランスやベルギーでは帰化に おける2重国籍を容認しています。そんなことをすると、海外から膨大な数の人々が日本に 押し寄せ、国内秩序が混乱すると危惧する人々がいます。

  しかし、「出生地主義」への転換は、日系企業のアジアでの展開が急速に進み、食糧の70 %以上、エネルギーの95%を輸入に依存、高齢化が進む日本が世界で生きていく上で必要不 可欠ではないでしょうか。双方の文化を理解する人が日本国内に出現し「架け橋」として活 躍するようになれば、最近世界的に話題になっている『文明の衝突』でハーバード大学のハ ンチントン教授が述べているような日本の孤立化と滅亡の回避につながります。

  過去の歴史を踏まえることなく、「外国人が増えれば国内秩序が混乱する」ということば かりを強調するような、ものごとを長期的、多面的、根源的に考えることのできない不見 識な人々や、たとえわかっていても自己保身から何も発言せず、行動にも移せない無責任な 人々が、日本では司法界を筆頭に支配的な地位に就いています。その弊害が子供の問題をは じめ現在起きている深刻な社会問題の元凶になっているといっても過言ではありません。

  第2次大戦中、ドイツの一般大衆は、時の政府がユダヤ人に対して残虐行為を働いていた ことをそれとなく知っていたにもかかわらず、何も行動を起こさなかったことが、人類史上 例のない大量虐殺につながったのは周知のことです。

  同様のことは、日本でも起きました。戦前、支配的な地位にある人たちの不見識と無責任 を国民が放置した結果、軍部の暴走を許し、経済的困窮に陥り、満州事変、第2次世界大戦 へと突入、最近大きな問題になっている「731細菌部隊」に代表されるような非人間的な行 為の末に、人類史上唯一の被爆国となってしまいました。

  今を生きる日本人・島根県民の義務と責任において、この運動を進めることは、李雪梅さ んの子供の未来への道を拓き、日中信頼回復、そして世界の中で信頼される国(小渕総理の めざしておられる「有徳国家」)への第1歩と確信します。法治国家である以上、社会改革 は司法界から始めるしかありません。とめどなく不祥事が続くのは、今までこの部分にメス が入れられなかったからにほかなりません。

  これを機会に新しい日本をつくるべく議論の輪を広げ、未来への道筋を見つけようではありませんか。

 世界的な激動期の今起ち上がら なければ手遅れになります。

 asyura@green.hns.gr.jp

―――――――最大の加害者は最大の被害者である―――――

(c) 2004 Human Nature Science Institute